羊膜の不思議

幹細胞増殖、分化

パーキンソン病治療に道

羊膜組織上で粘膜上皮細胞や体性幹細胞が効率的に増殖、分化するということは、眼科領域、皮膚科領域、耳鼻咽喉科領域、消化器外科領域で共通に観察されております。

培養幹細胞が増えるスキャフォールドとして、羊膜組織が非常に有用であることが、他分野でも判明しました。
細胞成分除去した羊膜組織上で無血清培地条件下でES細胞を培養すると、ES細胞はコロニーを形成し、神経前駆細胞、ドーパミン神経細胞、運動神経細胞、眼組織である網膜色素上皮細胞、水晶体組織へ効率よく分化することが判明しました。
ヒト羊膜組織がES細胞に対して強い増殖と神経分化誘導活性を有することを物語ります。

本研究は、文部科学省のリーディングプロジェクト「再生医療の実現化プロジェクト」の一環として進められたもので、(独法)理化学研究所の笹井、上野および京府医大眼科の木下らの成果です。
笹井らは、これまでにサルES細胞から分化させたドーパミン神経細胞をパーキンソン病モデルサルに移植し治療効果があることを示しておりますが、培養中に動物由来細胞を用い病原体の感染などのリスクがあるため、いままでの方法ではヒトへの移植治療を行うには問題がありました。
(平成18年6月6日 理研、府医大共同プレスレリースより)

今回の成果で、ヒトES細胞のパーキンソン病などの神経難病、網膜色素変性症などの網膜疾患への再生医療の実用化への技術的問題のひとつが取り除かれたことになります。

ES細胞とは:受精卵は、受精後、卵割を開始し、一つ一つの細胞の境界が不明瞭な「桑実胚」となり、ついで「胚盤胞」といわれる状態になる。胚盤胞は、内側の将来胎児となる内細胞と外側の胎盤をつくる細胞群とに分化する。胚盤胞の「胎児となる内部細胞の塊だけを取り出し細胞をバラバラに分離し、これを培養してヒトES細胞を作る。

羊膜組織中の幹細胞を用いる細胞移植治療:糖尿病治療の可能性

富山大学医学部再生医学講座
教授 二階堂敏雄先生

糖尿病モデルマウスへヒト羊膜上皮細胞を移植すると、移植群に於いて血中グルコース濃度の減少が認められた。また羊膜上皮細胞移植から一ヶ月経過後の脾臓、膵臓、肝臓に於いて、PCRによりヒトDNAが検出され、移植細胞の生着が確認された。脾臓に生着した細胞がインスリンを発現していることも示された。

このように、羊膜上皮細胞は糖尿病モデルマウスに生着すると共にインスリンを発現し、羊膜上皮細胞を移植されたマウスの高血糖及びそれに連座する体重減少を改善したことから、インスリン依存性糖尿病に対する羊膜上皮細胞移植治療の有用性が示唆された。

羊膜細胞は、BMP受容体を発現し、更にBMP-2、BMP-4、Osteocalcinも産生する。羊膜間葉系細胞をBMP-2と高分子乳酸-ポリエチレングリコールで培養すると、軟骨細胞特異的なコラーゲンタイプIIの発現が見られた。羊膜間葉系細胞をBMP-2とin vitroで培養すると、軟骨細胞様形態が誘導された。
これらより、ヒト羊膜間葉系細胞より、軟骨細胞が誘導できる可能性が示唆された。

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